SAND STORM

朝ぼらけ

2012年11月2日

Wizardryの著作権はどうなっているのか

Filed under: 未分類 — Tags: — sajin @ 07:50

Wizardryは日本製のcloneやspin-outは現れるものの、PC版の過去作がGOGなどに出てくることはなく、8の後継となる作品も作られる気配がないが、その権利関係はどうなっているのだろうか。

調べて見ると、原作者の一人であるAndrew GreenbergとSir-Techの間で延々続いている裁判闘争、そして6(Bane of the Cosmic Forge)で突如呪文名が変わった理由が浮かび上がってきた。

◇6~8と商標権”Wizardry”の所有者となったIPM(元アエリア子会社)とその親会社Gamepot

今回アエリア IPM が譲り受けるのは、「Wizardry6」、「Wizardry7」、「Wizardry8」、「Wizardry Gold」の著作権等の一切の権利および「ウィザードリィ(Wizardry)」の全世界における商標権。

今後の「Wizardry」シリーズを始めとして、「ウィザードリィ(Wizardry)」の名を冠したあらゆる商品の国内外における製作権を包括的に譲り受けることとなる。

アエリア IPM、「ウィザードリィ」の著作権・商標権を取得 @ インターネットコム

2006/11[お知らせ]
SirTech Canada及び1259190 Ontarioより、Wizardryに関する世界版権を取得

“Wizardry®” is a registered trademark of IPM Inc. All rights reserved. Licensed by IPM Inc. to Gamepot Inc.

ウィザードリィの版権管理を行う「IPM」のホームページへようこそ!

以上の様に2006ADにWizardry Onlineを運営するGamepotの子会社IPMに商標権含めた版権は移っているが、これは過去作では6~8の権利とWizardryを冠した新規作品の制作権(trademark=商標権)に限られる。

以下のinterviewでGamepot代表の岩原景士が語っている。

岩原氏:
まず正確にいうと,弊社が所有しているのは“Wizardryをゲーム化する権利”です。そしておっしゃるとおり,シリーズの中ではWizardry 6~8の権利を持っていますので,ゲームポットからそれらを再販することも不可能ではありません。ただ,それをやるには,データがきちんと揃っているかどうかの確認から始めないといけないんですけどね。

岩原氏:
Wizの事情に詳しい人であればご存じのように,実はWizardry 1~5に関しては,まだ権利が本国でもグレーゾーンなんですよ。そんな状態なので,我々としてもどう扱ったものか,と。

4Gamer:
結局あれって誰が権利持ってるのか曖昧なままなんですよね。

岩原氏:
……実はこれ,英字そのままでは版権に引っかかるかもしれませんけど,「カティノ」とカナ表記した場合には,その限りではないんですよ。例えば「MALOR」なら,カナにした場合には「マラー」なのか「マロール」なのか正確には決まっていませんし。

いま明かされる「ロスト」の仕様――“喜怒哀楽”を喚起し,プレイヤーの記憶に残るゲーム体験を提供する「Wizardry Online」について,二人のプロデューサーに聞いた @ 4Gamer.net

◇1~5を使用不可能にするAndrew GreenbergとSir-Techの裁判闘争

1~5に関して、というより元々のWizardry seriesに関しては原作者の一人であるAndrew GreenbergとSir-Techとの裁判が延々続いている。

#Andrew C. Greenberg(Wikipedia)はpatent attorny(知的財産を扱う弁理士)であり、どちらかと言えばそれが本職。

以下は原告:Andrew Greenberg, Inc. (AGI)と被告:Sir-Tech Software, Inc. (Sir-Tech S.I.)の裁判闘争の要録。

3 No. 19: Andrew Greenberg, Inc. v. Sir-Tech Software, Inc., et al.

Plaintiff Andrew Greenberg, Inc. (AGI) has alleged that in 1979 it created the name, concept and plot for a computer fantasy role-playing game known as “Wizardry.” Two years later, AGI and defendant Sir-Tech Software, Inc. (Sir-Tech S.I.) — both New York corporations — entered into an agreement granting Sir-Tech S.I. or a subsidiary the right to manufacture and market Wizardry, related products and any subsequent versions of the game.

AGIの主張する所では1979ADにWizardryの名やgameを構想し(製作ではない。商標権が問題になるためWizardryの名前だけでも重要になる)、1981ADにSir-Techとその子会社にWizardryとその続編の製造・販売の権利を与えた。

The 1981 agreement called upon Sir-Tech S.I. to pay AGI a license royalty fee and a percentage of gross sales revenues. It further provided that Sir-Tech S.I. was to copyright the Wizardry games and related products in the name of AGI. The contract also stated that its provisions were binding on the parties’ successors and assigns, and that Sir-Tech S.I. would not disclose any Wizardry game or related product, information or source of materials to anyone without written permission from AGI. In addition, all decisions concerning the assignment of rights under the Agreement required the consent of both parties.

この1981合意はSir-Techに上記権利付与への対価と総売上額(経費や税金を差し引く前の売り上げ)から一定率の報酬を定め、さらにSir-TechはWizardry gameと関連商品をAGIの名の元に取り扱うこと、加えてSir-TechはWizardryと関連商品のsource codeなど内部情報をAGIの許可無く公開しないことを定めたものであった。

The Wizardry game became successful, eventually resulting in several different versions and assorted related merchandise, as well as sub-licensing agreements. In 1991, however, Sir-Tech S.I. stopped sending royalty payments and accounting statements to AGI. Plaintiff alleges that Sir-Tech S.I. nevertheless continued to manufacture and sell subsequent versions of the Wizardry game and related products without furnishing AGI with any accounting or payment.

Wizardry franchiseは成功し、(種々のPC版や日本でつくられた家庭用機版など)さまざまな派生商品を生み、これらは1981の合意通り取り扱われた。しかし、1991AD、Sir-Techがその収入報告とroyaltyの支払いを停止したため、AGIはSir-Techが支払いを停止したにも関わらずWizardry関連商品を売り続けていると訴えた。

After successfully joining the two Canadian corporations, AGI served its second amended complaint, seeking an accounting as a basis for a money judgment under the 1981 contract. AGI also alleged breach of contract, trade secret misappropriation and tortious interference. In essence, AGI asserted that Sir-Tech S.I. appropriated to itself the trademark registration for the Wizardry name and logo, despite AGI’s co- ownership of the mark, and that the principals of Sir-Tech S.I. (Frederick SiroTech, Norman SiroTech and Robert SiroTech) reestablished themselves as Sirtech Canada and 1259190 Ontario, through which they continue to market and profit from the Wizardry product while depriving AGI of royalties or an accounting.

2001AD、Sir-TechはNew Yorkの会社を登記上潰し、その人員から資産まで新たに設立したSir-Tech Canadaへ移すことで、こういった支払い義務を逃れようとした。これに対してAGIは二回目の提訴を行い、1981契約に基づく支払いとその違約賠償金を求めるとともに、Wizardryの商標や意匠がAGIとSir-Techの共有物であるにもかかわらず、まるで独占物であるかのように取り扱い、1259190 Ontarioを通じて利益を貪ったことを非難している。

satisfactorily alleged that the principals of Sirtech Canada were the same as those of Sir- Tech S.I. and therefore were aware of the obligations and restrictions contained in the 1981 contract.

結局複数の裁判を経て、Sir-Tech側の主張は認められずSir-Tech CanadaはSir-Techと同様であるという十分な裏付けのある主張が行われた。

Andrew Greenberg, Inc. v Svane, Inc. (2007 NY Slip Op 00350)

Initially, we reject defendants’ argument that all of plaintiff’s claims against them were settled and released in the bankruptcy proceeding.

その後、Sir-Tech Canadaも倒産したが、倒産により支払い義務は失せたという旧Sir-Tech側の主張は却下されている。

全体にAGIが証拠などを固めて裁判を優位に進めているが、Sir-Tech側は会社の計画倒産などによりそれを逃れ、それをさらにAGIが追求するものの泥沼のままといった所か。

裁判で問題にされているのは名義使用権対価や売り上げに比例した報酬で、Wizardry seriesが完全にAGIの著作物だということではない。内部情報を許可無く公開しないという条項はあるが、Sir-Techが作った部分はSir-Techの権利である。だからAndrew Greenbergが自ら創造したcharacter(Werdnaなど)や呪文名などは引っかかるが、呪文名などを変えた6以降は関係ない(ということになっている)。

1990AD発売のWizardry 6 Bane of the Cosmic Forgeから突如呪文名などが変わったのは、このようなAGIへの支払い義務から脱却しようとするSir-Tech経営陣の意図があったと思われる。すでにSir-Techは潰れているが、1~5には明示的にAndrew Greenbergの権利やAGIへの支払い義務などが付きまとうので、AGIが主導的に解決しない限り、誰も触ることができない状態になっている。

実質的にPC版の1~5は凍結状態のabandonwareであり、法的・社会的riskを鑑みた上で各自が好きにするしかない。

AGIが課したroyaltyと売り上げからの支払いがどれほどのものかははっきりしないが、当時移植を担当したGAMESTUDIOの遠藤雅伸が移植許可に対してSit-Techが要求したroyaltyが重くほとんど利益はでなかった、またSir-Techから許可を受けてWizardryで商売した企業が軒並み撤退したことを証言している。このようなSir-Tech側の高いroyalty請求の背景にAGIへの支払いがあったことは確かだ。

ウィザードリィは本当に儲からないんだよ。

代表 えっ、でもファミコン版とかゲームスタジオの関わってるウィザードリィって結構売れたんでは?

御大 うん、そこそこね。
でもウチはかろうじて赤字出ずに済んだ程度。

儲かったのは高い版権料とってたSir-techだけで
・・・そのくせSir-tech@X△たんだよね(笑)

ウィザードリィに関わるとロクな事がないんだよ(苦笑)
アスキーもダメになったし、ローカスもゲームから撤退したでしょ。

※Sir-tech:Wizardryの版権元。現在カナダの支社が業務を受け継いでいてWIZ8はここで制作。

巨匠との雑談・ウィザードリィ @ 真ファミコン小市民

◇現状

あくまでPC版1~5に限る。Sir-Techの許可を受けて開発販売された家庭用機版やその影響を受けた日本版については部分的にそれぞれが権利を所有する。(ASCIIやすでに消滅したLOCUSはSir-Techの許可を受けて製作・販売したに過ぎないが、譲渡していない限り部分的に権利を持つ。例えばWizardryを冠したgameを勝手に作ったりはできないが、過去に作ったWizardry作品に関してはそれぞれが部分的権利を保有する)。

・Sir-Tech – すでに潰れているが権利を管理する個人もしくは組織はある。そのWizardry関連権利の一部(6~8と商標権)もしくはすべて(1~5もSir-Techの分は譲り受けているが使えない)がIPM=Gamepotへ移行。#Jagged Allianceの権利はStrategy Firstに売却された。ただしStrategy Firstも支払い不履行を起こしているので権利はさらに他に流れている可能性がある(このせいでStardockがImpulseの前身を創設)。

・Gamepot – Sir-Tech Canadaから権利譲渡を受けたため、1981合意や呪文名などを変えた6以降が関係ないという主張が通らなければAGIとの間に義務関係が生ずる可能性もある。寝た子を起こす可能性があるのでWizardry 1~5に関わってくることは考え辛い。

・AGI(Andrew Greenberg) – 1981合意によれば、Wizardryの権利を持つ最上位の存在はAGIである。主として問題にしているのはSir-Techが支払うべきなのに払っていない1991AD以降の報酬。知財を専門とする弁理士で、その思想は一般の昔gameを開発した人のそれとは異なる可能性がある。

After seeing too many of my friends fall into situations such as I
found myself with Sir-Tech, and generally lamenting the state of
technology law, I resolved to do something about it and became an
intellectual property and computer lawyer. Since that time, I have
been hacking the law with glee, aiding former colleagues in distress,
drafting electronic signature, internet and other technology-related
legislation, and trying to bring a sense of justice and right to
computer law.

Wizardry Fan Page by Snafaru – What happened to Andrew C Greenberg

Andrewは自身がSir-Techとの間で経験したようなことが多くの友人達にも起こったのを切っ掛けに、このような技術関係の法整備の不足を感じ、知的財産とcomputerを専門とする弁理士になったと語っており、実際IEEEの知的財産権委員会の委員を務め、国家表彰も受けている。

また海外ではDOSやAppleII時代のPC gameをそのまま収益化しようなどという考えは薄く(#1)、新作の為に自ら無料で配布(#2)したりabondonwareとして流通していても多くは放置される。その方がfan communityの維持と宣伝費の削減に繋がることが常識として共有されていることが大きい。

そもそもmainframe時代からcomputer業界、中でもsoftwareの世界は短期的に特定の権利者が儲けることではなく、知識を分け隔て無く自由に使用できるようにすることで全体が発展すること(#3)が当たり前となっており、海賊版や不正使用と表裏一体となって発展してきた(#4)。その様な文化にたっぷり浸かった中で作られたWizardryの使用を原作者であるR.WoodheadやAndrew.Gが今更とやかく言うことは考え辛い。Andrew自身も”Wizardryのような学生時代に作ったものを未だに多くの人が楽しんでいてくれることを嬉しく思っている”とfanへの回答はすこぶる友好的である。

#1 既にpackageでの一括販売すら昔の話で、あるのはGOGなどでDRM Freeでの出品。

#2 Railroad Tycoon,Ultima 4,Command & Conquerなど。日本ではAlice Softが一部配布freeを実施している。

#3 Linuxなどに代表されるGPL,CopyleftなどFree/Open思想とも繋がる

#4 Bill Gatesは高額な使用料が必要なnetwork越しのcomputerをhackingして使っていた常習犯。その後に続いていくSteven Jobsと共にAppleを開発したSteve WozniakらはそのGatesが作ったBASICを不法(敢えて不正とは言わない)使用していた。

Hard Drive: Bill Gates and the Making of the Microsoft Empire byJames Wallace & Jim Erickson

Homebrew Computer Club @ Wikipedia


関連記事

No Comments »

No comments yet.

RSS feed for comments on this post. TrackBack URL

Leave a comment


sand-storm.net