◇新宿の歩み
飯田橋駅で下りて後楽園方面に向かう。斯様な格好をした男たちが後ろ足がXになるぐらい交差させながら歩いていた。ここも一応新宿区の範囲内らしいから、さながら「邯鄲の歩み」ならぬ「新宿の歩み」か。
まず、水戸光圀が作ったという小石川後楽園へ行く。丁度公園は建物含め大規模修繕中で、
入り口の建物だけでなく、庭の方もばらして組み直していた。岩の一つ一つに番号を振って、もとに戻すという徹底ぶり。
こういう奇岩は完全に中国の上流階級の趣味で、日本にはない。なぜ後楽園にこんなものがあるのかというと、清に滅ぼされた明朝復興の為に鄭成功などと日本に渡った朱舜水が作庭したから(歴史の説明)。
昔は静かな庭だったのだろうが、現代では周囲に高層建築が見え、場所によっては隣の後楽園遊園地のやかましい音が聞こえてくる。雨が降ってきたので東屋で休みながらどうしようかと思ったが、どうせなら少し見てやるかと隣接する東京ドームの方に行くことにした。
domeの方に行くと、野球殿堂博物館というのが目についた。
私がある程度日本の野球を見ていたのは、野村監督時代の阪神Tigers(タイガース)とBobby Valentine(バレンタイン)監督時代のLOTTE Marines(ロッテマリーンズ)ぐらいで、それもTVで見ていたに過ぎず一度も球場に行ったことはない。そこにおける読売Giants(ジャイアンツ)は、ただ巨人が勝っていれば気持ちいいという人間を除いて興行の面白さを破壊する存在でしかなかった。
元々巨人に何の愛着もないので「どうせ長嶋とか王とかそんなのばかり並べている博物館なのだろう」と思って入ったら、そうではなかった。現代に近いプロ野球のもので目立つのは入り口に近いuniformの展示とposter部屋ぐらいで、長嶋・王は部屋の一角程度。
まず壁一面覆う焼き物の作品が素晴らしい。昔は学校などでよく見たが、今はこういうのは作られないのだろうか。
展示は日本における野球草創期の新橋アスレチッククラブや学生野球から、日米対抗野球など戦前ののものが多くを占めており、
明治三十年代の野球道具はまるで武道具だ。戦後もプロ野球起ち上げ初期までの貴重な展示が多い。
ここがいいのは、野球選手だけでなく、野球の創設に関わった人物を数多く殿堂入りさせて紹介している点。単に競技の中のことだけでなく、現代の日本史の一部が垣間見える。
virtualなbatting centerがあって打撃を試せたり、図書室があって資料を集積していたりと中々他にない博物館である。新しいものでは最近のposterが展示してあったりした。つば九郎が素晴らしい。